T−26軽戦車各型(Ps.163)

ソ連が英国ヴィッカーズ・アームストロングの6t戦車のライセンス生産権を得て、
1931年以来、独自の改良を加えながら大量に生産した、大戦初期主力のソ連戦車。
フィンランド陸軍にはオリジナルのヴィッカーズ6t(ヴィッケルス)戦車も戦前から若干保有していましたが、
冬戦争および継続戦争で侵攻してきたソ連軍の本車T-26を大量に捕獲、再使用しました
(その後、部隊を構成する戦車の、実に半数以上がソ連からの鹵獲戦車という、恐るべき戦車隊となる!)。
総計61両もの本車が修理され、戦時中のフィンランド軍の実質の主力戦車となりました
(捕獲戦車が主力って。。。)
T-26には膨大なバリエーションがありますが、パロラの戦車博物館にも、
(オリジナルたるヴィッケルスと並んで)複数のタイプのT-26が現存しています。
順を追ってご紹介していきましょう。



(↑クリックすると、デカイ写真に)


屋外展示でずらりと並んだ「T-26兄弟」!(の一部)
どれがどういう戦車だか識別できたところで女の子にモテルものではないが(!)、
画面左(手前)から、「T-26m1933」「T-26m1933初期型」「ヴィッケルス(T-26E)」。




T-26m1933初期生産型(Ps.163-15号車)。
分類は「T-26B」(捕獲した独軍でも芬軍でもこの呼称)。
双砲塔型のm1931(T-26A)の次に生産されたタイプで、
円筒形の小型砲塔(その生産工場の地名から俗に「マリウポル(Mariupol)砲塔」と呼ばれる)
を搭載したものです。
この砲塔は、やはり初期のBT-5快速戦車にも搭載されていました。
奇特なJSモデルが(!)これと同じ砲塔を1/35で製品化しています
(が、博物館ではヘトヘトで車体によじ登れず、砲塔上面の写真撮れずm(--)m)。




T-26m1933型(Ps.163-28号車)。
これも「T-26B」という分類で呼ばれます。
45mm砲を搭載し、先の初期生産型と比べて大型になった、
馬蹄型の砲塔が搭載されています
(BT-5m1934や、BT-7m1935、BA-3/6装甲車と同じ砲塔)。




同じ車輌の後部。
機関室上面のM字型のグリルカバーは、ソ連が冬戦争での教訓を活かして開発したそうです。
屋内ホールにもこのm1933型がもう1輌展示してありますので、
細部はそちらで後ほどご紹介しましょう。




T-26m1939型。分類は「T-26C」(独軍でも芬軍でも)。
傾斜した砲塔と車体装甲を持った進化形です。




同じ車両。
この個体は、冬戦争中に捕獲された後も再利用されることなく、
砲塔や車体後部の被弾跡(完全に貫徹されて割れている)が痛々しくも、そのまま保存されています。




T-26m1939型(Ps.164-7号車)。
本車も(外見は)T-26Cですが、砲塔前部(砲盾基部)の形状が先のものとは違っています
(本車のは段付きの鋳造(といわれるが、プレス加工に見える)のものが付いています)。
先のは溶接構造で、「m1937」とも呼ばれる初期のT-26Cと同じ砲塔でもある)。

また本車は、もともとはOT-133火焔放射戦車だったものであり
(先のT-26とその位置を比べて見てもわかる通り、
砲塔が車体右側にオフセットされていることが特徴。
五角形の車体機銃マウント部も芬軍の手による改造)、
捕獲後にフィンランド軍の手によって、通常型の戦車として再使用されました。

この車両はそういう特殊な経緯なので
もっと詳細に見てみる?




屋内展示ホールにはまた、別のm1933型「R-119(後に「Ps.163-33」)号車」が展示されています。
もう少し(だけ)ディテールを見たい方はこちらへどうぞ。

一部は1961年まで使用されたというこれらT-26戦車達(!)、
大手模型メーカーはインジェクションキット化しないのかしら。
1/35ではガレージキット以外に、
ズベズダのm1933やミラージュの(クセのある(~~;))m1939が出ていますが。


おりしも現地特派員(!)、みほこさんより、
ヘルシンキで開催された「Hobby Expo 2003」において
(その模様は女史のHP内「みつけたもの」にてレポートされているので必見)、
「戦車博物館から戦車が1輌、特別展示としてやって来た」との通報!


許可をいただきその写真を掲載しますが、なんとT-26m1939型(芬軍戦後仕様)でした。
プレス加工(鋳造説もあり)で段付きの砲盾をもった、
また(車体前面機銃ポートがないので)OT-133改造ではない、純正のT-26Cです。
戦車博物館では私はこれまで見たことがない個体です。
まだ色々と車両を大事に保管しているようですね。
恐るべし、フィンランド人の物持ちのよさと、歴史的遺産に対する心意気!
(そして恐るべし、現地特派員!(^^)Kiitoksia!)




「(T-26と似て非なる)ヴィッケルス」はこちらから。
(写真は屋外展示の「T-26E」(45mm戦車砲を搭載したヴィッケルスPs.161-9号車))



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