”なんで履帯のセンターガイドが転輪シャフトに当たらないで済んでるんだ〜疑惑”
PHASE:2
Suomen Landsverk Anti:n mysteerio


 対空戦車「ランズヴェルク・アンティII」(実車写真集「ランズベルク・アンティ」参照)。 ある謎について疑問提起されてからはや数年。 実地調査を出来ないまま悶々としていた。

 フィンランド軍に興味のあるモデラー・研究家ならば「誰でも知ってる戦車」と言えるかも知れないが(否・・・やっぱりマイナー戦車である)、思わず「んなモン売れるかい!」と言葉も出そうなマイナー車両が、ガレージキットではなくインジェクションでマスプロされる驚くべき時代にあって、案外に残っている写真資料のみならず、状態のすこぶる良い実車がこれだけ残っていれば資料に事欠かないにもかかわらず、模型化に恵まれない車両のひとつである。
 ところがなんと世の中には奇特なメーカーもあるもので、米国の「FLAMES OF WAR」なるメーカーの約1/76メタルキットや、日本でもフェアリー企画が1/72レジンキャストキットを開発・発売したことがある。
 自分が考えてもわからない個所について、他人が同じ個所をどう解釈しているのか。 つまり、模型化された製品では、「あの部分」がいったいどうなっているのか。

 私は残念ながらフェアリー企画のキットを未入手なので(もっともフェアリーのキットも、これまでの同社1/72キットを見て想像するに、恐らく上部転輪の謎が解けるような構造にはなっているとは思えないが)、FLAMES OF WAR社のメタルキットなるものをここでご覧に入れようと思う。
 米国FLAMES OF WAR社製、約1/76ランズベルク・アンティII対空戦車。 現地価格で9ドル90セント(約¥1,000)って・・・安っ! パーツ総数は豪華な9点(「車体」「砲塔」「砲身」「左右足回り」「兵隊の頭4人分」!)から成るフルメタルモデルで、砲塔は旋回できる。 もっとグズグズなものを期待予想していたのだが、意外と仕上りがシャープ。

 驚くべきは、砲塔内に4名の戦闘要員が一体成型で鎮座ましましているところである(頭部のみ別パーツ・・・ということで、頭が吹き飛んだ兵隊が4人座っている様子が怖い怖い!)。 このモデルの詳細については機会を変えて解説するつもり。

 そもそも15mmサイズのウォーゲーム(最近はヒストリカル・ゲームっていうのか)の駒としてのミニチュアであるが、なかなか好印象である。(・・・そうと言って、無理して入手するほどのもんではない(!))

 せっかく模型化されたアンティだが、正直なところ、純然たるスケールモデルとは呼びづらい。 なによりも「あの部分」を含めた足回りが、(ロコ方式の)一体成型なので、検証のしようがない。 履帯を含めて一体成型にしたということは、「あの部分」の謎は見て見ぬフリを決め込んだということなのだろうか(いやいやいやいや)。
 余談ではあるが、ちなみにこのメーカー、なんと「BT-42」や、驚くべきことに「フィンランド軍迫撃砲チーム」「機関銃チーム」などといったものまで製品化している。 ウォーゲームのコマとして、確かにこれらへの需要はあるだろう(私もシミュレーション・ゲーマーだったらフィン軍のコマ欲しいもの)。 嬉しくなったので(調子に乗って)BT-42も併せて入手したのだが、その紹介は(本件とはまったく関係がないので)別の機会に改めることにする(もっとも、BT-42もまたグズグズなものを期待予想していたのだが、いやはや、LKの1/35キットよりもこちらの方がよっぽどディテールが正確だ(!))。


 残念ながらアンティを商品化したなどというものは、先述したもの以外に私は知り得ない。 これは取りも直さず、恐らく模型市場の現状やモデラー世間の認識では、考証ミスや設計ミス、模型としての組みづらさ、インストの間違いやヘタクソなボックスアートなどなど、どんなトンマなキットを開発しようが、大きな声でブーブーやいのやいの言われないキットは、このランヅベルク・アンティをおいて他にないと言って過言ではないだろう(メーカーさん、狙い目でっせ)!

 ・・・にもかかわらずキット化に恵まれないのは、ひとえに、「あの部分」が謎構造だからであろうか?!(いやいやいやいやいや)

 ところで同じランヅベルクL-60系の足回りを持った車両はどうなっているのか、当然気になる。 スウェーデン軍のStrv.m/38〜40はもちろん、アンティの弟分であるハンガリーの対空戦車「ニムロッド」をはじめ、同軍の主力戦車「トルディ」などを検分したいが、ハンガリーやスウェーデン(アクスバル)まではなかなか行くこともならず、さらには誠に残念なことに、2007年10月に私がロシアへ飛んだ時期には、クビンカ戦車博物館(日本から一番近いニムロッドやトルディの収蔵施設!)は一般人の来訪が禁止されてしまっていた(!)。 ということで、これらの足回りに関しては今後の調査や資料を待つしかない状況である(誰か調査しに行く人があれば教えて欲しい!)。


 アンティに劣らずニムロドも(たぶん)キット化されていないが、トルディは近年1/35スケールで本国ハンガリー製のレジンキットが発売された。 バラトン・モデルの製品、「トルディI型」のフルキットである。 トルディのキットとしてドウとかコウとかということはここでは問題にせず、このキットでは「あの部分」がどう解釈されているか見てみることにする。 ぶっちゃけ「あの部分」がどのように再現されているのか確かめたかったのと、付属のインジェクション・キャタピラ欲しさで、大枚はたいて購入した(まぁ・・・そのお店では一万円しなかったんですけど)。 これでハルと足回りを流用してアンティをスクラッチするという、世界征服級あるいは宝くじで三億円当選を繰り返す級の野望に一歩踏み出した(!?)。

Balaton Modell製1/35レジンキャストキット「トルディ-I」。

 気になる上部支持転輪の謎機構。
   おっと・・・まるで無視。 フツー。
 付属する履帯は、なんとモデルカステン製。 非可動連結式。
  とはいえ、このカステン・キャタピラは海外向けにしか流通していないので、これ(だけ)を目当てに本キットを購入した日本のモデラーも多い(!?)
← ヤッター!! 履帯のセンターガイドと正しくぶつかるぞー!(←それでいいのか?)

 ぶつかることは良くわかったが、その問題をどうやって解決すればよいのかというところまでは、組み立て説明書には書かれていない。
 キットの軸が太すぎるのか上部転輪の径が小さいのか、あるいはカステン・キャタピラの寸法に問題があるのか・・・はたまたどちらにも問題なく正確だが、単に謎機構が省略されているのか・・・これは実車の計測調査が必要だ。
 やれやれ・・・カネ出して謎をさらにやっかいなことにした瞬間である。


 このキットは純然たるスケールモデルとして開発されているので、検証の参考になると思っていたのだが・・・。

 押し入れの肥やしを増やしたばかりか、レジンキャスト特有の臭いを周囲に漂わせて、ヨメはんに怪訝な顔をされていたおりしもその頃、重大な事件が起きた!
 なんと・・・「あの部分」の謎が解けたのである(←いきなりかっ!!)
 PHASE:3、この後すぐ!!


2008.07.15(か)

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