フィンランド空軍フォッカーD-XXI主翼のスリット?スラット?スロット?考察
Suomen Fokker D-XXI:n SLIT? SLAT? SLOT?−その2


 フィンランド空軍の使用したフォッカーD-21戦闘機(フィンランド通称「フォッケル」実機写真集参照)。1941年10月以降(?)の写真において、主翼前縁近くに「孔(というかスリット)」が開けられた機体と、そうでない機体が混在していることが見受けられることについて、その「孔」の正体と存在意義について考察してみたのは、もう一年前の話。


チェコのKORA-models製1/72レジンキットの"Waspi(ワスピ)第4シリーズ"は、「孔あり」の機体が再現できる。
(ご丁寧にも、シャープな「孔」を演出するためにエッチングパーツが付属している!(^^))


 航空工学や流体力学といった知識や理解がまるで無いワタシは、その正体に関して、博識などんじ氏かば◎氏からのコメントから(→要は単なる知識のウケウリでワタシは)、
 固定スラットがない代わりの、スロットの役割としての、スリット
 ・・・であろうという、結論(めいたもの)を書いておいた。それから一年、この「仮説」を「確信」「確証」に至らしめるべき、貴重な反応をBBSにいただいたので、記述者の了解を得て再録させていただくことにした。一連のカキコミをしてくれたのは、HN「通りすがり」氏である。(現「最近ただの豚」氏(~~))

フォッケルD21のスロットについて 投稿者:通りすがり  投稿日: 1月 9日(金)23時05分9秒


サーフしていて、たまたまたどり着いてしまいました。
私も北欧空戦史を読んで以来、フィンランドのファンです。
とても美しい写真が多く、フィンランドへの思い入れが伝わります。
現地で現物を見ていらっしゃるとは実にうらやましいですね。

私は学生時代、グライダーにはまって、自家用操縦士と整備士の資格を取りました。
で、半分玄人位の域だとは思うのですが。少しばかり薀蓄を、、

 フォッケルの主翼に穴が空いてる件ですが、これはご指摘の通りスロットだと思います。

テーパー翼(翼端に行くに従って先細りの翼)は一般に、翼上面の気流が外流れをし、結果として翼端失速を起こしやすい傾向が有ります。
これは、着陸などで、機首を引き起こして大きな迎角を取ると、突然左右どちらかの主翼の先端から失速が始まり、キリモミ状態になるという恐ろしい事態を招きます。
そこで、隼のように、主翼の先端を若干前方に出して前進翼(隼の場合、前縁が直線で、翼の中心線が前方に斜めになる)として、外流れを防ぐか、零戦のように翼端の部分に行くに従ってわずかに迎角を小さくなるように作るか(ねじり下げ)するような工夫が必要になります。

フィンランドはD-21を蘭印がキャンセルするというドタバタで買った為、おそらく飛ばしてみるまでそんな事は分からなかったのでしょう。
この辺は北欧空戦史にも熟練したパイロットでないと着陸が難しかったという記述がありますね。
で、改善しようにも当のフォッカー社はドイツに占領されて設計変更や改造などのアフターサービスに応じてくれるはずも無く、相当苦労したと思われます。このスロットは苦し紛れの改造というような感じですね。

このように主翼に隙間を空けると、主翼下面の圧力の高い空気が上面に噴出し、大きな迎角を取って剥離しそうになっている上面の気流を再び翼の表面に貼り付けるようにする効果が有ります。
もちろん、揚力は若干ロスをするのですが、着陸間際でいきなりキリモミされるよりはまし、という所でしょう。

後退翼のジェット機はこの傾向はもっと顕著なので、主翼の上面に境界層制御をする為に小さな板を貼り付けたりしているものも有ります。

木製や羽布張りの機体、私が学生時代に乗ったりいじったりしたグライダーみたいで懐かしい感じです。最近のグライダーは炭素繊維などの複合材料なので、雰囲気がまるで違いますけどね。


 ・・・・・・なんと! 「フィンランドが好きだから実際に現地へ行く」とか、「戦車の模型が好きだから実車を見に行く」とかいうのはワタシの趣味でもあるが、天晴れ!「趣味の究極」たる、
「飛行機が好きだから自分で整備して実際に飛んでみる」
という豪快な(!)方からの解説であった。
 この「通りすがり」さんからの貴重な(そしてド素人のワタシにも理解しやすい)解説に痛く感動し、このカキコミを当ページに引用させていただきたい旨レスポンス申し上げたところ、快く承諾いただいたばかりか、さらに次のようなカキコミを・・・(文中の黒文字は、拝読した際の管理人(ワタシ)の心の声)


私も前からフォッケル作りたいんです。(←ああ、当BBSでもしばしば話題に上る1/72や1/48キットのことだろう)

材料の木材は比較的容易に手に入ります。加工も基本的に日曜大工の工具でOKです。(←木製ソリッドモデルか?)

で、サイズを2/3位にすれば、重さは大体実機の1/3(=0.66^3)になります。 そうすれば、マーキュリー670馬力のエンジンの代わりに200馬力クラスのセスナなどのエンジンで飛ばせそうです。(←2/3スケール!?200馬力!?飛ばす!?)

アンティーク機向けに星型エンジンを作っている会社も有るのでそんなのを使うのも有り?
もっと小型で、軽めに作れば、自動車等のエンジンでもOKですが、機体構造が弱くなり、激しい機動は出来なくなります。(そんな事、アマチュアの分際でしないよね、普通)

テストパイロットはもちろん私です。(←!!!!)

 ・・・・・・またしてもなんと! 「自家用飛行機」ならぬ、「自家製飛行機」!!(しかも、フォッケル!!)
 海外でもマニアの存在する「自家製飛行機」のサイトなどもご紹介いただいたのだが(歴史上の航空機を、多少スケールダウンあるいはデフォルメして再現し、それを自分で操縦する趣味人!コツコツと室内で製作して完成した暁には、ドアや壁をぶちぬいて滑走路へ運んで行く豪快な野郎も居るという!!)、「72ぶんの1」とか「48ぶんの1」、あるいはモデラーがビッグスケールと呼んでいる「32〜24ぶんの1」なんてスケールの、なんと小さいことか!(~~;)
 いやはや、いいお話を聞かせていただきました>通りすがりさん!(メールもKiitos!)

 ぜひ「フィンランド空軍のフォッカーD-XXI各機の仕様考察」の頁も参考にしつつ、読者諸兄も、「自家製フォッケル」を作って飛ばしていただきたいと思う(!)。

2004.02.10(つづく?)

「フォッケルのスリットスラットスロット:その1」に戻る
「空軍編」に戻る