フィンランド空軍のフォッカーD-XXI各機の仕様考察
Suomen Fokker D-XXI



 フィンランド空軍は1936年末にオランダから、7機の単葉単発の(当時の)最新型戦闘機:フォッカーD-21を購入した。その後国内でライセンス生産が開始され、まもなく始まった「冬戦争」において大活躍したことは有名である。その後引き続いた「継続戦争」でも、改良型(改悪型とも評される!)が生産されるなどして長く現役として留まり、最終的には97機の「ふぉっける(フィンランド人による呼称)」が就役、戦後も1948年まで訓練部隊で使用されつづけた(以上、写真とともに「実機写真集」内「フォッカーD-XXI」をご参照いただきたい)。
 それらの機体の仕様には各機毎/時期毎に、特徴的な部分が散見できる(面白いところでは遅くとも1941年10月以降、主翼前縁近くにスロットの役目を果たすと考えられるスリット(孔)が開けられた機体と、未改修の機体が混在した。これについては別項:「ふぉっける主翼のスリット/スラット/スロット」を参照していただきたい)。

 当コーナーでは、そうしたこの名機:97機の仕様を(チェコのMPMから、「Fokker D-XXI "suomen III sarja"」と題した1/72キットが発売になったことも記念して!)、手持ちの書籍の写真によって追跡していくことにする。1/72でこれまで現役を通してきた旧フロッグ製(各部位の寸法やディテールには問題があるが、胴体のアウトラインは決して「大間違い」とは言い難い)やPM-model製(フロッグ以来の新規開発とは思えなかった!)、今や入手困難なClassic-Airframe製1/48キット、その他チェコ製レジンキット(PH-modelの1/72など)を作る際の参考(苦痛?)になれば幸いである。

 該当機体の写真の載っている参考書籍とその頁数は、表中「出典」に記号で表した。なお、それら写真の載る書籍としては、「Suomen Ilmavoimien Historia」シリーズの(日本でも比較的入手が容易な)「Fokker D-XXI(mercury)」および「同(wasp)」(フォッケルにこだわるならこの2冊!)を中心にしたが、中には(フィンランド本国でも)絶版/入手難な書籍もあることをご了承いただきたい。
凡例:
 3a=「Suomen Ilmavoimien Historia 3a:Fokker D-XXI(mercury)」(Hobby-Kustannus OY)
 3b=「Suomen Ilmavoimien Historia 3b:Fokker D-XXI(wasp)」(Hobby-Kustannus OY)
 ■=「Suomen Ilmavoimien Lentokoneeto 1939-72」(TIETOTEOS)
 ×=「Finnish Air Force Camouflage and Markings」(Apali OY)

・フォッケルは、「I sarja」から「V sarja」までの5つのシリーズ(生産ロット)に大きく分かれる。表は、各シリーズ毎にまとめた。
・表中「塗装」の項:「単色」とは「オリーブグリーン単色(FS34096に相当といわれる)」、「三色」とは「(フィン空お馴染み)3色迷彩」を指す。
・表中「照準器」の項:「筒」とは「筒型照準器」、「直視」とは「(恐らくフィンランド独自の)直視型照準器」、「箱」とは「箱型光学照準器(ドイツ製Revi3cといわれる)」を指す。
・表中「垂直尾翼」の項:「標準」とは「標準的(オリジナル形状)の垂直尾翼」、「天狗」とは「上端が天狗の鼻のような垂直尾翼(フィンランド製独特の形状)」を指す(正式には何と呼ぶのか知らん。また、マスバランスの意味があるのか、なぜあんなカタチにする必要があったのかも事実は知らん)。
・表中「主翼スリット」の項:「○以降有」とは「○以降の写真で存在を確認出来る」ことを示し、「-」と無印は「増設された写真を確認できない」ことを表す。
・この一覧表は、飽くまでも出典書籍で見られる写真による追跡をしたものであり、例えば「塗装」が「1940.1-5単色」とあるのは、「少なくともその期間中の写真では、そうだ」というものであり、実際には「その前後も単色が続いていた」、或いは「直後に変更になった」ことまでをも示しているものではない。

※ところで、「SIH3a(mercury)」のP.72英文の解説文中:「The fourteen licence aircraft were(中略)the II series machines were assembled between November 1938 and March 1939 and coded FR-82 - FR-96:第2シリーズはFR-82〜-96の14機」というくだりがあるが、正しくは「FR-83〜-96」である(「82〜96」では「15機」になってまう!機体別の紹介と照らし合わせると合わないだけので、単純なミスタイプだろう)。お手持ちの方は書き直しておくと良かろう。

200304.26

I sarjan    II sarjan    III sarjan    IV sarjan(別ページ)   V sarjan (別ページ)


I sarjan(第一シリーズ:オランダ・フォッカー社から直輸入した7機)
FR- 塗装 照準器 垂直尾翼 主翼スリット 出典 備考
76 37単色 40.2筒 37上端にマスバランス付。40.2標準。 - 3a-12,18 40.2翼内機銃はポッドに改造
77            
78            
79 38.2単色   38.2標準 - 3a-9 38.2スキー脚(試作型)
80 38春-38.8単色 38春筒 38春-38.8標準 - 3a-3,10,11/■-9  
81            
82 40.7-8単色。41.7三色 40.7-41.7筒 40.7-41.7天狗 - 3a-26,37,46  


II sarjan(第二シリーズ:最初にフィンランド国内でライセンス生産された14機)
FR- 塗装 照準器 垂直尾翼 主翼スリット 出典 備考
83 40.5単色。42.2以降三色 42.10-42.10筒 40.5標準。44.8天狗 (43.10?)44.8以降有 3a-5,32,56,60,62/×-81,158  
84            
85            
86            
87            
88            
89 41.7三色 41.7筒 41.7標準 - 3a-42  
90 41.7-12三色 41.7-12筒 41.7天狗 - 3a-42,裏 天狗垂直尾翼はFR-141より移植
91 40.5-11単色 40.5-11筒 40.5-11標準 - 3a-34,36  
92 40.5-6単色。42.8三色 40.5-42.8筒 40.5-42.8標準 42.8以降有 3a-28,29,31,58,59,61,×-34 42.12スキー脚
93 39.3単色 39.3筒 39.3標準 - 3a-9 39.3スキー脚
94            
95 40.2-6単色。42.4単色?+黄帯。43.6三色 40.2-42.4筒 40.2-42.4標準。43.6天狗 43.6以降有 3a-16,28,29,31,57,62 40.2,42.2スキー脚
96 39.10単色 39.10筒 39.10標準 - 3a-13  


III sarjan(第三シリーズ:更にライセンス生産された21機)
FR- 塗装 照準器 垂直尾翼 主翼スリット 出典 備考
97 40.1-11単色 40.1-11筒 40.1-11標準 - 3a-21,36  
98 40.1-5単色。41.6-7単色+黄帯。41.8三色 40.1-42初頭筒 40.1-42初頭標準 - 3a-20,35,41,43,53,55,56,57 40.1,42初頭スキー脚
99 40.1単色。41.12三色?+黄帯 40.1筒 40.1標準 - 3a-20,50 40.1,41.12スキー脚
100 40夏単色。42.3三色 40夏-42.3筒。43.6直視 40夏-42.8標準。43.6天狗 (42.3?)42.12以降有 3a-34,47,49,51,62 42.3スキー脚
101            
102            
103 40.11単色。41.8三色 40.11-41.8直視 40.11標準 - 3a-36,55  
104 39.12-40.9単色。41.9三色 39.12-41.9直視 39.12-41.9標準 - 3a-22,37,46 39.12スキー脚
105 40.4-7単色 40.4-7直視 40.4-7標準 - 3a-25,35/×-24 40.4スキー脚
106 40.6単色 40.6直視 40.6標準 - 3a-30,32  
107            
108 40.5単色。41.5三色+雪。41.7-9三色 40.5-41.9直視 40.5-41.5標準。41.7天狗 - 3a-33,39,42,45,裏/×-31  
109 37.7単色。41.7以降三色 41.7-42.8筒 37.7-41.7標準 - 3a-13,41,49  
110 40.1-4単色。42初頭三色 40.1-42初頭直視 40.1-4標準 - 3a-16,24,57,61 40.1-4,42初頭,42.12スキー脚。復元機現存(ただしレプリカ。中央航空博物館)
111            
112 40.1-40夏単色 40.1筒。40.7直視 40.1標準。40.7天狗 - 3a-16,27,37 40.1スキー脚
113 41.6-8三色 41.8直視 41.6-8天狗 - 3a-40,44  
114 40夏単色。41.8三色 40夏-41.8直視 40夏-41.8標準 - 3a-32,53,54/×-33  
115            
116 40.4-41春単色。42初頭単色+黄帯。43.3三色 40.4-42.8直視 40.4-42.8標準 - 3a-25,38,42,43,49,51 40.4,42初頭スキー脚
117 40.4-41.1単色 40.4-6直視 40.4-41.1標準 - 3a-8,30,32 41.7引込脚に改造


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