投稿者:桜樹ルイ16世 投稿日: 1月14日(火)00時15分13秒 >>非常に衝撃的な質問がフィンランド人の口から >→!!??(^^) (←注:この直前の氏の書き込みに対する私の反応) まー、最初に衝撃的だったのは、ウチの掲示板にも書いた「なぜニホン人はロシア人を敵視する?」発言だったのですが、その後さらにおどろくべき展開がありました。梅本弘氏の『流血の夏』を紹介したところ、参考文献(特に芬語分)を見て、 これ、すごく偏ってますよ とおっしゃったのです。えー? フィンランド側から描いた戦記なんだから偏っててあたりまえやろ、と一瞬思いがちですが、そこで議論した結果、彼女の論点は以下のように明確化しました。 @ この本は「読み物」なのか「研究書」なのか、はっきりしない。 A あの参考文献は「読み物」ならば許される内容である。つまり、恣意的である。 B だがしかし、あの本全体のトーンには「研究書」っぽい雰囲気があり、また 「他に類書が無い」ということで権威性を帯びてしまったりするとヤバそう。 というもので、これにはさすがの吾輩もショックでした。要するに、民族感情やイデオロギーの面でも双方に「等価」の重みを与えて解説せねば、それは科学的な価値を持たない、と言い切っているわけですから。で、この主張は字面からすると「親ソ的」みたく見えなくもないんですが、実際に話した感触は違うんですね。 以前MG誌のフィンランドの戦争博物館取材記事で、フィンランドでは博物館の模型の「考証不備」がシリアスモデラーから突き上げられることが多いので展示品の製作も大変だ、というのがありましたが、なにやらそれに近いような感じです。と言うと本人に怒られてしまうかもしれませんが(笑) |
投稿者:かさぱのす 投稿日: 1月14日(火)13時13分39秒 >桜樹ルイ16世さん >>すごく偏ってますよ →ははは(笑) 飽くまでも「模型雑誌に連載されたものの単行本化」ですからねぇ。ある意味「偏った文献資料」を取り揃えないと、(特にフィンものモデラーが)納得できるああいう内容(具体的な兵器の名前とそれがもたらした状況を緻密に描く)には仕上がらなかったと思います。 「研究書」と「読み物」の線引きをどこでするのか(或いはそんなこと出来ないのか、著者が「これは研究書」と言えば「研究書」、「読み物」と呼べば「読み物」なのか?)ワタシにはよくわかりませんが、フィンランドの歴史的背景とかフィンランド人とかいうものを知る上で、実は個人的に一番皆さんにお勧めしたい(これも「宣伝」ではないですが)書物は、当サイト参考「和書」コーナーでも取り上げている、小野寺誠氏著「あの夏、フィンランドで」というエッセイです。非常に残念なことに現在では絶版になっているのですが、web上の古書店でしばしば目にすることもありますので、ぜひ機会があればご一読お勧めします(ただし決して「素晴らしい/美しい/賛美できる内容の本」ではないです。フィンランドにおける「暗い/寒い/アウトロー/ヤな感じ」な部分も隠さずに書かれているので、特にワタシのように「フィンランド側に偏ってしまいがち」な人間にとっては貴重な「読み物」です)。 |
投稿者:梅本弘 投稿日: 1月16日(木)13時05分34秒 久々に来てみると「流血の夏」が読み物なのか、研究書なのかと言うことが話題に登っていましたが、著者の意図としては「みんな知らんだろうが、フィンランド軍はこんなに奮戦したんだ」と言うことを書きたかったわけで、故に単なる戦記読み物です。 研究書に見えるとしたら、それは読者の誤解で「読み物なのに研究書」にみえるよう意図したこともありません。ただし、戦記ものにしたって、あまりにフィンランド側のみの唯我独尊、自画自賛にならないよう留意はしています。だから「内容が恣意的」とまで言われるとちょっと心外だなァ。些少ながらロシア側の資料も調べたし、そんなに偏っているとは思わないけどなァ。 きっと、フィンランド人から見ると、参考文献が、日本で喩えれば「光人社の出版目録とか、戦友会の部隊史目録」のように見えたのでしょう。と言うことで「流血の夏」は読み物ですが、少なくともフィンランド側のデータはなるべく正確を期しているので、誰かがロシア側で調べたデータを付き合わせてくれれば、研究書にもなるかもしれません。だれかやってくれませんかねェ。 そういえば今、ロシアで「レニングラード航空戦」と言う本が作られていますが、この企画にはロシア、ドイツ、フィンランドの航空史家が参画しているそうです。先日、フィンランドの航空史家が何人かモスクワを訪れて打ち合わせをしたなどという話も聞いているので、両軍戦果/損害のデータを付き合わせた非常に正確な航空戦史研究書の完成が期待できるでしょう。今年の夏に出版される予定だそうです。 |
投稿者:かさぱのす 投稿日: 1月17日(金)01時07分48秒 >梅本さん →著者ご本人からのご意見を頂戴し、誠に光栄です! サイト管理人として、まず最初に明らかにしておきたいのは、(メールにてお話した通り)桜樹ルイ16世氏やそのご友人のフィン人にしても、当BBSで梅本さんを個人攻撃をする意図は毛頭ないものであることを>皆様にお伝えいたします。 また先のレスで、「流血の夏」に対するワタシなりの見解というか評価を明確にしていませんでした。ぶっちゃけた話、同書を愛読させていただいているワタシとしては(^^)、「あの著作が是か非か」という単なる「個人の主観論争」が過熱しないように、違う本を紹介するなどして、それとなく別の方向へ持って行ったのでありますm(__)m。 ワタシ個人的な見解としては、(梅本さんがお書きになった通り)「モデラー諸氏がまだ誰も知らなかったフィンランドの戦い」を記した著作であり、そもそも「なにがなんでもフィンランドがエライんじゃ/ソ連がいかに悪者だったか」という糾弾よりも、「知られざる(悲惨な)戦争の極一面」が客観的表現で著されていると感じています(また、後にも先にもあれ以上に、具体的な戦闘の描写の日本語の「研究書」なり「読み物」は出て来ないとすらも思いますし)。 。。。ということでワタシ的には(趣味からして当然のことながら)「歴史を知る上での貴重な資料として評価大」なのですが、もともと本から得る印象や感想というのは、かなり個人差があるものですから、あれを否定的に見る人がいても不思議ではないし、それが間違いだとも言えません。特に戦争や人種問題を扱った本や映画では、それが顕著です(同じ日本人の中でも、フィンランド人同士でも、ロシア人同士でも)。 >桜樹ルイ16世さん曰く: 「〜『フィンランド人にもいろんなのがいる』という前提で書くのが王道か、と思うのですが(中略:先の桜樹氏からのメールより一部抜粋した個所である)面白味のある展開になるといいですねー!(このメールのやりとり自体を掲示板にアップするという手もありますが)」 。。。とのことです(^^) もし「オレにも言わせろ!」なご意見がある場合は、(如何せん文字だけのヤリトリのBBSです)単なる「主観論争」にならない程度でお願い申し上げます、>皆様。(。。。ワタシも文学を専攻したことがないので、ムツカシイ話になるとオロオロしてしまうもんで(^^;)) |
ちなみに、その友人は今『高い城の男』を読んでいるらしいです。 投稿者:桜樹ルイ16世 投稿日: 1月18日(土)23時10分42秒 (本題とは無関係のため前略)で、本題いきます。 正直なところ、吾輩の友人のフィンランド人が「ロシア好きか嫌いか」というのは問題の本質とあんまし関係ないように思うんです。彼女が不満げだったのはあくまで「フィンランド好き=ロシア嫌い」と決めつけたがる思考センスであって、本人自身はさしてロシアに好意的でもないみたいですし。 これは「フィンランド好き日本人」と「日本好きフィンランド人」の求めるモノのすれ違いが根底にあるのかもしれませんね。知人に、以前は日露文化交流団体の行事にちょくちょく出向いていたのに、だんだん行かなくなってしまったロシア人がいて、なんでや?と聞いてみたところ 結局、ああいう場で私たちは、日本人の趣味主観的な 「俺ロシア」の補強材料になることしか期待されていない。ロシア料理店にあるマトリョーシカと一緒! ということでした。例のフィンランド人の場合も同様と考えられます。というか、ちょっと探りを入れてみた感触からするとどうもそのようなので、これはかさぱのすさん的にもなかなか見逃せない展開ではないでしょうか。しかし、この手の議論を掲示板で続けると、かさぱのすさんがおっしゃるようにいつ「主観のエグいぶつけ合い」になるかわかりません。ということで、その気があれば酒の席に持ち込んでみた方が良いような気がします。なんといっても、先日吾輩と議論した後、そのフィンランド友人の帰り際のコトバが 今度はビール飲んで議論しましょう! だったこともありますし(笑) ちなみに、彼女が言っていた「客観的」説明でひとつ興味深かったのが、フィンランドで戦後、1960年代から70年代ぐらいに、戦中世代の反露感情に若者世代が反発して妙に親露的なムーヴメントを盛り上げた、という事実があるらしいことです。何かしら日本の学生運動を思い起こさせるものがありますが、まあ、そういう好き嫌いの主観の根拠には何があるかわからん、ということは言えるかもしれません(笑) |